第2章 国内外の原子力開発利用の状況
12.原子力開発利用の推進基盤

(1)人材の養成と確保

 近年、我が国の社会においても大学においても過去に比べて、「原子力」に対する魅力が薄れ、大学ばかりでなく産業界や研究機関の人材確保に困難を生じるようになっている。
 しかし、将来にわたるエネルギーの安定的な確保のためには、原子力の開発利用はますます拡大すると予想され、また高い安全性が求められることから、人材の量的確保のみならず、質の高い優秀な人材の確保・養成が重要である。1997年3月31日現在の原子力関係の技術系従業員、研究者、技術者の数を表2−12−1に示す。

表2−12−1 原子力関係の技術系従業員数
原子力産業における技術系従業員数約35,000人
主な政府関係研究機関における研究者・技術者の数約5,500
(1997年3月31日現在)

日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団、理化学研究所の3つの特殊法人、放射線医学総合研究所、金属材料技術研究所、国立試験研究機関、(財)原子力発電技術機構、(財)電力中央研究所、(財)核物質管理センター、(財)原子力環境整備センターの4つの公益法人の研究者・技術者の計

 原子力関係の研究者、技術者については、大学などが人材養成の中核機関として果たす役割が大きく、原子力発電所などの技術者、技能者については、基本的には民間における養成訓練が主体となっている。
 また、公的機関における人材養成訓練として、日本原子力研究所、放射線医学総合研究所などにおいて研究者、技術者、医療関係者などを対象とした種々の研修や、(社)日本アイソトープ協会、(財)原子力安全技術センターなどにおいて放射線取扱主任者資格指定講習などの資格取得に関する講習会が実施されている。これらの研修では、原子力研究開発機関はもとより、地方公共団体、大学関係者や民間企業などからの幅広い参加者も受け入れている。
 一方、原子力開発利用に関係する人材の裾野を拡大するという観点からは、特に多くの若者が原子力に対しての正しい知識、客観的な判断力を持ち、またその将来性に対して理解するようになることが望まれる。
 このような観点から、

・教師を対象としたセミナーの実施
・教職員向けの副読本の作成配布
・青少年に対する参加型のイベントの開催
・研究開発機関での体験学習
・科学館における展示物の整備
など、青少年の原子力に関する学習機会を提供し、正しい原子力知識の普及に取り組むとともに、大学、大学院などの学生及び研究者に対して、政府関係研究開発機関の研究設備・機器を利用する機会や研修学生の受け入れの拡大など、人材養成面での関係機関の連携を強化している。
 国際的な原子力開発利用の進展を踏まえ、諸外国の安全確保、技術開発等のための人材育成を目的として、原子力関係の行政官、技術者、指導者を我が国に招へいする形での研修及び講師を我が国から派遣して行う現地研修の実施に努めている。また、IAEA、OECD/NEA等の国際機関及び各国に対して我が国の幅広い人材を派遣するとともに、諸外国からの研究者を受け入れることによる人材・技術交流を積極的に進めている。

表2−12−2 原子力関係資金の概要
1996年度政府原子力関係予算  約4,949億円( 2.4%)
     うち科学技術庁分  約3,571億円( 3.7%)
       通商産業省分  約1,308億円(▲2.0%)
       その他     約  70億円( 29.2%)
                  ( )は前年度比増

産業界における原子力関係支出高(1996年度実績)
     電気事業      約1兆6,218億円
       うち研究開発費    約434億円
     鉱工業       約1兆6,894億円
       うち研究開発費    約802億円
(1998年度政府原子力予算については379ページ参照)


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