第2章 国内外の原子力開発利用の状況
11.原子力分野の国際協力

(5)核軍縮の実施等に係る協力

①核兵器の廃棄等に係る支援
 旧ソ連の核兵器の廃棄については、1993年5月の原子力委員会委員長談話にもあるとおり、第一義的には当事国が責任を持って対処すべきものであるが、我が国がこれまで培ってきた原子力平和利用の技術と経験を活かし、旧ソ連の核兵器の廃棄等平和に向けた国際的努力に積極的に協力することは、核軍縮と核兵器の拡散防止に貢献する上で重要である。
 核兵器廃棄協力に関する二国間協定に基づき、ロシアとの間で、廃棄された核兵器からとり出された核分裂性物質の貯蔵施設に関する協力、放射性廃棄物処理施設の建設協力等を実施しているほか、ベラルーシ、ウクライナ及びカザフスタンに対しては、核物質管理制度の確立のための協力等を実施している。
 また、余剰兵器プルトニウムの安全かつ効果的な管理の方策については、原子力安全モスクワ・サミットの成果を踏まえ、1996年10月、パリにおいて、また、1998年3月、ロンドンにおいて国際専門家会合が開催され、原子炉での燃焼、ガラス固化などの方策について、国際的な検討が進められている。

表2-11-14 旧ソ連に対する核兵器廃棄の支援分野
○ロシア
・核兵器廃棄後発生する核分裂性物質の貯蔵施設の建設協力
・原子力潜水艦の解体に伴い発生する液体放射性廃棄物貯蔵
・処理施設の建設協力(浮体構造型施設を建設中)
・緊急事態対処機材の供与

○ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン
・核物質管理制度の確立に関する協力
・放射能汚染者に対する検査や治療に必要な医療機器及び医薬品供与等

表2-11-15 高濃縮ウランの取扱
 1994年1月、USEC(米濃縮公社)は、ロシアの核兵器解体から取り出される500トンUの高濃縮ウランをロシア国内で低濃縮ウランに希釈された形で購入する契約を、ロシア原子力省との間で取り交わした。この契約の下、以下の引き渡しが完了している。
○1995年:約186トンU(高濃縮ウラン換算:約6.1トンU)
○1996年:約371トンU(高濃縮ウラン換算:約12トンU)
○1997年:約481トンU(高濃縮ウラン換算:約18トンU)

②国際科学技術センター(ISTC
 旧ソ連邦の大量破壊兵器関連の科学者、技術者の能力を平和的活動に向ける機会を提供することを主な目的として、日本、米国、EC及びロシアの四極は、1992年11月に「国際科学技術センターを設立する協定」に署名し、1993年12月の本協定を暫定的に適用する議定書への署名を経て、1994年3月に本センターをモスクワに設立した。我が国は、本センターの運営及びプロジェクトへの資金支出及び本センターの事務局への人材派遣などを行っている。


ISTC:International Science and Technology Center

③低レベル液体放射性廃棄物処理施設の建設
 1993年4月、ロシア政府は、旧ソ連及びロシアが長年にわたり北方海域及び極東海域において放射性廃棄物の海洋投棄を継続してきた事実を明らかにした。さらに、1993年10月には、日本海において液体放射性廃棄物の海洋投棄が実施された。
 政府としては、ロシア政府に対して厳重に抗議するとともに、海洋環境放射能調査を実施し、これら投棄により我が国国民の健康に対して影響が及んでいるものではないことを確認している。
 このようなロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄の問題を解決するため、日露核兵器廃棄支援の資金の一部を利用して、ウラジオストク付近に原子力潜水艦の解体等に伴い生じる低レベル液体放射性廃棄物の洋上処理施設を建設中である。本施設が完成すれば、極東における液体放射性廃棄物の海洋投棄を将来にわたり防止する上で十分な処理能力を有するものとなる予定である。


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