第2章 国内外の原子力開発利用の状況
10.原子力科学技術の多様な展開と基礎的な研究の強化

(2) 原子力利用分野の拡大に関する研究開発等の状況

 原子力利用分野の一層の拡大のため、受動的安全炉等の新しい概念の原子力システムに関する研究開発や、高温の熱の発生により多様な利用の可能性が期待される高温工学試験研究、原子力船への利用などの研究を進めています。

①新しい型の原子炉の研究
 新しい型の原子炉の研究としては、受動的安全性を具備した軽水型発電や長寿命放射性核種を効率的に消滅させる高速炉などの概念について、幅広く基礎的・基盤的研究を推進している。


 
  

図2-10-7 高温工学試験研究炉(HTTR)

②高温工学試験研究
 高温ガス炉は固有の安全性が極めて高いうえに1000℃程度の高温の熱が供給できるため、発電のみならず水素製造などさまざまな分野での原子力エネルギーの利用が可能になる。
現在、日本原子力研究所において、高温ガス炉の基盤の確立、高度化及び高温工学に関する先端的基礎研究を進めるため、1998年夏の臨界を目指して高温工学試験研究炉(HTTR*)の建設が進められている。


*HTTR:High Temperature Engineering Test Reactor

③原子力船の研究開発
 我が国最初の原子力船である「むつ」は、実験航海を終了し、原子炉室の一括撤去などの解役作業を1995年6月に終了した。現在「むつ」で得られた成果を踏まえた、改良舶用炉の工学設計研究が進められている。
一方、「むつ」から撤去された原子炉の保管・展示や海洋研究などの先端的科学に関する展示を行うため、青森県むつ市に「むつ科学技術館」が1996年7月に開館した。むつ科学技術館では、1997年度4万人の入館者を迎えた。

図2-10-8 むつ科学技術館(青森県むつ市)で保管・展示している原子炉


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