第2章 国内外の原子力開発利用の状況
8.核燃料サイクルの展開

(6)核燃料物質等の輸送

 現在、我が国で使用されている核燃料は、そのほとんどが外国から船舶で輸送され、港からトレーラによって再転換工場等へ陸上輸送されています。また、国内の原子力発電所からでる使用済燃料は、国内外の再処理工場に専用運搬船により海上輸送されています。

 海外から我が国へ輸送される核燃料物質は、発電用低濃縮ウラン燃料の場合は、低濃縮ウランの原料となる天然六フッ化ウラン、海外で濃縮された六フッ化ウランまたはさらに転換された二酸化ウラン粉末の形態で輸送されている。

図2−8−10 核燃料物質の陸上輸送

 これらの核燃料物質は、加工事業所間においては、二酸化ウラン粉末または六フッ化ウラン、また、加工事業者と原子力発電所等の間においては、新燃料集合体の形で輸送されている。
 天然六フッ化ウランの青森県六ヶ所村日本原燃(株)ウラン濃縮工場への輸送については、従来から陸上輸送による方法に加え、年1回程度むつ小川原港まで直接海上輸送により行われることとされ、現在まで2回の海上輸送(1996年9月及び1997年7月)が安全に実施されている。
 使用済燃料については、東海再処理工場及び英仏の再処理工場へ、各原子力発電所から、専用運搬船により輸送されている。
 低レベル放射性廃棄物については、専用運搬船により全国の原子力発電所から六ヶ所村の低レベル廃棄物埋設施設への輸送が行われている。

表2−8−4 原子力発電用核燃料物質の輸送物確認実績

図2−8−11 高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)運搬船(パシフィック・スワン号)

 核物質の輸送情報の取扱いについては、1996年9月、天然ウランの輸送情報について、警備に重大な支障をきたす情報を除き、輸送関係者間で合意される範囲内で原則公開可能とされた。さらに、1997年8月、それ以外の核物質の国内輸送並びに使用済燃料及び低濃縮ウランの国際輸送について、公開可能な範囲を拡大することとされた。
 英国及びフランスでの再処理により回収されたプルトニウムについては、基本的には海外でMOX燃料に加工し、我が国に海上輸送により返還し、軽水炉により利用することとしており、輸送が円滑に実施できるよう、国としても所要の調整を進めることとしている。
 また、同じく英国及びフランスでの再処理により発生する高レベル放射性廃棄物の我が国への返還については、フランスからの第3回輸送が1998年1月から3月にかけて英国の輸送船「パシフイック・スワン号」によって行われ、輸送容器に納められたガラス固化体60本が返還された。なお、同船のむつ小川原港への入港に当たり、「パシフイック・スワン号」の入港が3日遅れた。

図2−8−12 ガラス固化体輸送容器(キャスク)


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