第2章 国内外の原子力開発利用の状況
6.原子力発電の展開

(2)原子力発電の将来見通しと原子力施設の立地の促進

 設備容量(万kW)総発電電力量に占める割合(%)
2000年
4,560
33
2010年
7,050
42
2030年
約10,000
 
「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」より

①原子力発電規模の見通し
 今後の原子力発電の開発規模については、1994年に取りまとめられた原子力開発利用長期計画において、2000年において約4,560万キロワット、2010年において約7,050万キロワットの設備容量を達成することを目標とし、さらに長期的展望として、2030年の原子力発電の設備容量は約1億キロワットに達するとの期待が原子力委員会により示されている。
 (財)日本エネルギー経済研究所が1996年度に行った「原子力の将来展望に関する調査」では、再生可能エネルギーによる電力供給の可能性や21世紀の電力供給システムの中での原子力発電の位置づけの検討について一定の仮定の下で試算を行っている。そこでは、図2-6-5に示すとおり、実現性はさておき、再生可能エネルギーが飛躍的に導入されると仮定しても、ある程度を超えた再生可能エネルギーの導入は電源の総コストの増大をもたらし、さらに、不安定な再生可能エネルギーの導入を補うためのバックアップ用の化石燃料を使用する電源が必要となるため、かえって二酸化炭素排出量が増大していくことが示されている。また、原子力開発が進まないとする場合の影響についても試算しており、図2-6-6に示すように最適電源構成の場合に比べてコスト、二酸化炭素排出量ともに大幅に増加するとしている。この調査では、再生可能エネルギーが飛躍的に導入されるという極端な仮定を想定しているが、そのような想定の下でも、経済性の面のみならず、地球温暖化防止の観点からも、原子力発電の果たす役割が大きいことが示唆されている。

図2-6-5 太陽光発電の導入規模とコスト・CO2排出量・原子力設備容量の関係

 なお、通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会及び電気事業審議会の各需給部会において、COP3で合意された数値目標の達成を目指して、長期エネルギー需給見通し及び長期電力需給見通しの改定作業が行われており、6月中旬に取りまとめられる予定である。

再生可能エネルギーのうち、水力、地熱、風力、廃棄物発電について、実現性はさておき、最大限に導入されると導入し、また再生可能エネルギーの中でポテンシャルの大きい太陽光発電をパラメータとして変化させ最適電源構成を試算している。
図2-6-6 原子力開発がCO2排出量、発電コストに与える影響

②原子力施設の立地促進
 今後、上記の原子力発電設備容量を確保するに当たっては、原子力発電所の立地には計画から運転開始までの先行期間(リードタイム)が長期に及ぶことを考慮すると、早急に対策を充実していくことが必要である。
 また、立地に伴う地域振興効果を期待する地元の声も、ますます多様化してきている。原子力施設の立地による波及効果を地域の自立的かつ持続的発展に結びつけることが重要であるが、その際、既存立地地点における地域の発展状況が、新規立地予定地点の理解を深める上で意義が大きいことにも留意する必要がある。
 原子力施設の立地促進の主体は事業者、地元の地域振興の主体は地方公共団体であるが、国としても立地円滑化の観点から地元と原子力施設が共生できるよう、関係省庁が一体となって地元の地域振興に一層きめ細かな支援を進める必要がある。また、立地地域を始めとする国民一般に対して、マスメディアを通じた積極的な広報などの理解促進策を展開していくほか、バックエンド対策及び使用済燃焼貯蔵対策の強化を図る必要がある。
 立地地域の振興対策の拡充を図るためには、電源三法(末尾参照)(発電用施設周辺地域整備法、電源開発促進税法及び電源開発促進対策特別会計法)の充実などが逐次図られているが、1998年度には、電源地域に立地する企業の設備投資を支援する電源過疎地域等企業立地促進事業費補助金の拡充や原子力発電施設等の所在する市町村が行う企業導入・産業近代化事業に対する電源地域産業育成支援補助金の拡充等、立地地域の産業発展に対する支援の強化が行われた。
 また、電源開発調整審議会では、電源立地を「国をあげて支援すべきプロジェクト」と位置づけるとともに、電源開発調整審議会に上程される前の段階(初期段階)における取り組みが重要であるとし、1993年3月同審議会の下に電源立地部会を設置し、関係省庁の協力を得て、初期段階地点の状況の把握、地域振興計画に関する助言、協力を継続的に行っている。さらに、1997年1月には電源立地部会の運用を強化し、新規立地点のみならず、大規模原子力発電施設が存在する地域を対象とした地域振興計画についても広域的計画も含め助言、協力していくこととされた。
 1997年4月総合エネルギー対策推進閣僚会議において、要対策重要電源(末尾参照)として、新たに中国電力(株)島根原子力発電所3号炉(137.3万キロワット)が指定された。本指定を受けた地点に対しては、電源開発促進対策特別会計電源立地勘定による重要電源等立地推進対策補助金の交付などの諸施策が重点的に講じられる。

図2-6-7  我が国の原子力発電所の立地点(1998年4月1日現在)

(1998年1月1日現在 出典:通商産業省資料)
図2-6-8 要対策重要電源・開発促進重要地点(末尾参照)位置図

図2-6-9 女川町総合運動場・陸上競技場(電源立地促進対策交付金施設)

図2-6-10 マーケティング事業による「電気のふるさとじまん市」

<用語解説>

・電源三法とは?
 安定的かつ低廉な電気の供給を確保することは、電気事業に課された使命ですが、電気事業を巡る内外の情勢は厳しく、今後とも長期にわたって電気事業がこの使命を果たして行くことは決して容易ではありません。
 そこで、電源地域において公共用施設の整備等を行うことにより電源立地の円滑化を図ることを目的として、1974年度に電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法及び発電用施設周辺地域整備法(いわゆる電源三法)を整備し、これに基づいた交付金等の交付を行なっています。
 1998年度予算においては、約2,236億円の交付金等が盛り込まれています。
 この交付金等を活用して、例えば、電源地域における道路、港湾、医療施設、教育文化施設などの公共施設の整備、企業導入・産業高度化のために行われる事業に対する支援、電源地域産業の育成を図っていくための支援などが行われています。

・要対策重要電源とは?
 計画的にもかなり具体化しており、電力の長期的な供給確保上特に重要な電源として、1977年度から総合エネルギー対策推進閣僚会議の場で指定を行っているものをいいます。

・開発促進重要地点とは?
 電力のより長期的な供給確保上特に重要な電源であり、要対策重要電源に準ずるものとして、通商産業省が指定を行っているものをいいます。


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