第2章 国内外の原子力開発利用の状況
3.核不拡散へ向けての国際的信頼の確立

(3)核物質防護措置

 核物質防護とは、核物質の盗取などの不法な移転や、原子力施設などへの妨害破壊行為を防止することです。

 我が国においても、核物質を国際輸送する際の核物質防護、核物質を用いた犯罪人等の処罰義務等を定めた核物質防護条約や具体的な核物質防護のレベルなどを定めたIAEAのガイドラインを遵守し、関係行政機関により、原子炉等規制法などに基づいて所要の施策を実施してきている。
 原子炉等規制法においては、事業所で特定核燃料物質を取り扱う場合には、

・施錠等の核物質防護措置を講じること
・核物質防護規定の認可を受けること
・核物質防護管理者を選任すること
が義務付けられ、また特定核燃料物質の運搬の際には、その容器に施錠及び封印をすること及び運搬に係る責任の移転等に関して内閣総理大臣の確認を受けなければならないこととなっている。原子炉等規制法に基づき1997年に行われた、核燃料物質の運搬に係る責任の移転等に関する確認実績は219件であった。
 1992年9月の核物質防護条約の再検討会議においては、廃棄物中の核物質に関する核物質防護の在り方などを検討するため、ガイドラインの見直し会合を開催するよう要求が出された。その結果、1993年6月にIAEAガイドラインが改定され、これを受けて原子力委員会は1994年3月に、
「改定されたIAEAガイドラインの規定に従い、ガラス固化体の核物質防護措置については、慣行による慎重な管理に従って防護するものとし、このための所要の法令整備を図る」
旨の委員会決定を行った。同決定を踏まえ、同年5月、原子炉等規制法施行令及び関係規則等の一部改正が行われた。
 また、核物質の輸送に係る情報の取り扱いについては、従来より核物質防護の観点から、輸送日時、経路などの詳細な情報について公表することのないよう慎重を期すよう取り扱ってきたが、1994年3月及び1996年9月に、それぞれ返還ガラス固化体等及び天然ウランの輸送情報について、警備体制など警備に重大な支障を及ぼす情報を除き、輸送関係者間で合意される範囲内で原則公開可能とすることとした。
 さらに、1997年8月に、原子力開発利用に係る諸活動の透明性向上の観点から関係省庁と協議しつつ慎重に検討を行った結果、従来非公開としていた輸送事業者名、搬出入側施設名、輸送数量、容器個数、形式等の輸送前及び輸送中の情報を原則公開可能とするとともに、輸送終了後の情報については、輸送経路、警備体制、施錠・封印等核物質防護措置に関する情報を除き原則公開可能とした。


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