第2章 国内外の原子力開発利用の状況
3.核不拡散へ向けての国際的信頼の確立

(1)核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の延長

 「核兵器の不拡散に関する条約」は、1970年3月に発効し、現在のような国際的な核不拡散体制の基礎ができあがりました。5核兵器国を含む186ヶ国が締結(1997年7月現在)しているこの条約は、原子力の平和利用と核不拡散を両立させる極めて普遍性の高い国際的枠組みとなっています。1995年行われたNPTの再検討・延長会議で、その無期限延長が決定されました。

 NPTは、核兵器国を1967年1月1日前に核兵器を保有していた米国、ロシア、英国、フランス及び中国の5ヶ国に限定し、これ以上の核兵器国の出現を防止することにより、核戦争の可能性を少なくすることを目的としている。
 NPTは、非核兵器国に対して核兵器の受領、製造、取得等を禁じ、IAEAのフルスコープ保障措置(参照)(すべての核物質について保障措置を受け入れること)の受入れを義務付ける一方、すべての締約国に対して原子力の平和利用の権利を保障し、かつ、核兵器国には核軍縮のための交渉を推進することを義務づけている。
 条約発効後25年目にあたる1995年の4月から5月にかけて、ニューヨークの国連本部で、NPTの再検討・延長会議が開催され、投票によらずに条約の無期限延長が決定された。我が国としては、この結果を歓迎するとともに、今後は、さらに核兵器のない世界の実現に向けて努めていくことが重要である。
 NPTの無期限延長の決定に際しては、「再検討プロセス強化に関する決定」及び「核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定」の2文書があわせて採択されている。

表2−3−1 NPT再検討・延長会議での採択文書の概要
○「再検討プロセス強化に関する決定」
 ・条約運用の再検討プロセスを強化。
 ・再検討会議を今後5年ごとに開催(次回は2000年)。
 ・次回再検討会議に先立つ3年間、毎年準備委員会会合を開催(1997年から開催)。
○「核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定」
 ・1996年までの「包括的核実験禁止条約(CTBT)」交渉の完了とその間の核実験の抑制。
 ・「核兵器その他核爆発装置用核分裂性物質の生産禁止(カットオフ)条約」交渉の即時開始と早期終結。

CTBT:Comprehensive Nuclear Test-Ban Treaty


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