第2章 国内外の原子力開発利用の状況
1.動燃改革について

(2)動燃改革の具体化に向けて

 動燃改革検討委員会の検討結果を受け、動燃改革と新法人への改組の具体化を図るため、科学技術庁は、1997年8月、「新法人作業部会」を設置し、検討を行いました。
 また、この検討と並行して、科学技術庁及び動燃においても自己改革等の推進が進められています。

 動燃改革検討委員会は、その報告書において、改革の基本的方向性に基づいて、具体的な改革案を作成する作業部会の設置を提案した。また、同委員会は、作業部会の作業完了まで存続させ、適宜作業部会の作業の報告を受け、改革の進捗状況を確認することが併せて提案された。
 この提案を受け、科学技術庁は、1997年8月、動燃改革検討委員会の報告書を踏まえ、動燃の改革の具体化の推進と新法人への改組の具体化を図るため、科学技術庁、動燃を始め、日本原子力研究所、電気事業者、大学の学識経験者等関係各界の協力を得て、「新法人作業部会」(部会長:鈴木篤之東京大学教授)を設置し、具体化に向けての調査・検討の作業を開始した。
 また、新法人作業部会における作業と平行し、科学技術庁及び動燃においても、自ら実施すべき改革について着手し、現在、引き続き自己改革等の推進が進められている。

①新法人作業部会報告書
 新法人作業部会においては、部会長による動燃各事業所からのヒアリングとともに、現地調査等を実施し、1997年12月、中間報告書として新法人の事業、経営、組織体制についての「新法人の基本構想」を取りまとめ、動燃改革検討委員会への報告、了承を経て、科学技術庁長官あてに提出した。同報告書は、動燃改革検討委員会報告書を基本とするものであるが、作業結果として同報告書に示された動燃改革の具体化の主要事項等は表2-1-2のとおりである。
 なお、同報告書においては、基本構想の立案に際しての条件として、動燃自らの改革活動が実効を上げるとともに、新法人が業務、人材、施設、設備等を継承するに当たり、次のとおり、動燃において適切な措置が講じられるよう求めている。
・新法人への移行までの間に役職員の意識改革を立案、実行し、自己改革の進展に国民の理解が得られるよう努めること。
・業務内容の点検を実施し将来課題等を抽出するとともに、整理縮小事業計画を含む業務引継書を作成すること。
・安全性総点検等の結果を踏まえ、施設・設備とその運営・管理等に関し改善を図ること。

表2-1-2 「新法人の基本構想」の概要(1997年12月9日新法人作業部会中間報告)
①新法人の事業
 新法人においては、競争力ある技術にとって本質的に重要な枢要技術を特定しつつ研究開発に取り組むなど計画の最適化を図ること等を基本とする。以下に事業の考え方を示す。
○事業の重点化
・高速増殖炉と関連する核燃料サイクル技術の研究開発
 高速増殖炉、高速増殖炉の核燃料物質及び核燃料物質の再処理に関する研究開発を実施する。
・サイクル廃棄物環境保全技術の研究開発
放射性廃棄物の処理処分及び施設の廃止措置に関する研究開発を実施する。
・対外的支援協力事業
技術移転等の成果普及、施設の一般への開放及び国際協力を実施する。
○整理縮小事業
・新法人は、海外ウラン探鉱、ウラン濃縮及び新型転換炉開発の3事業については、それぞれ動燃が策定する整理縮小計画を引継ぎ、それに沿って事業を整理していく。
・新法人に馴染まないとされた基礎研究は、適切に評価した上で日本原子力研究所等の他機関に移管、または中止することとする。この基礎研究には、加速器を用いた消滅処理、ビーム利用等の研究が含まれる。
○事業の進め方と事業の合理化
・「競争力ある技術」の確立のため、重要な開発課題を枢要技術として特定し、十分なコスト意識をもって、その研究開発に重点化する。
・外部研究人材の活用の観点から、民間を含めた他の研究機関や研究者等との協力、共同研究等を積極的に進め、特に基礎研究に近いレベルで大学との緊密な協力や共同研究を推進する。
・新法人においては、動燃から継承する業務については今後10年から15年間程度にわたった長期的展望の下に、人員の合理化の目標を定めることとし、また、今後新たに展開すべき業務については厳しく評価した上で適切な人員の規模を確保する。

②新法人の経営
○経営の要件
・内閣総理大臣は、原子力委員会の議決を経て、「基本方針」を策定する。新法人の理事長は、基本方針に基づき、自らの責任と裁量の下に5か年程度の「中長期事業計画」を策定する。
・明確な中長期事業計画の策定を前提に、業務の執行については最大限、理事長の裁量に委ね、科学技術庁の関与は必要最小限のものとする。また、科学技術庁は、毎年度の業務の執行結果等に関し業務監査を実施する。
・経営の透明性と社会性の確保のため、「経営審議会(仮称)」を設置するとともに、公開シンポジウムの開催により国民と双方向の情報交流を行う。
・新法人は経営理念を極力わかり易い形で定め、役職員をはじめ内外に周知を図る。また、経営方針を定め役職員に徹底させるとともに、事業計画を個々の職員に徹底させ、目標管理制度等を活用し、個々人の業務の範囲と目標を明確化する。
・安全確保と危機管理を最優先とし、理事長を頂点とする責任体制を明確化する。
○経営の機能強化
・経営陣を刷新し、理事会議等を強化するとともに、経営に係る企画調整機能等の強化のため、「経営企画本部(仮称)」を設置する。
・徹底した教育研修、OJTによる教育指導、個々の職員の目標達成度の明確化と人事評価への反映、外部等との人事交流等による意識改革を推進する。
・昇任・昇格試験制度の導入、責任と成果・貢献に応じた給与体系の見直し、管理職への若手や外部人材の登用等管理職の人事制度を刷新する。
・人材育成指針の策定、新人事制度の導入、業務特性に配慮した処遇改善等、人事管理制度を刷新する。
・業務の高い「質」を目指し、業務品質保証活動を強化・推進する。

③新法人の組織体制
○安全確保の体制
・現場の責任ある一貫した指揮命令系統の確立を基本とし、施設を運転・管理する現場の長の安全責任を明確化するとともに、プラント等についてはセンター化して一貫した組織体制に再編する。また、運転・保守要員等の強化を図る。
・請負作業員の比率の高い運転管理部署においては、責任ある運転管理体制を確立する。
・事業所横断的な支援組織としての「安全推進本部(仮称)」の設置、一般防災、事故等に関するデータベースの構築と運用、危機管理体制の整備等により安全支援体制を確立する。
・現場における危機管理体制の整備を推進するため、「危機管理推進室(仮称)」を設置するとともに、24時間当直制による通報連絡体制の整備、地域と協調した緊急医療体制の充実、事故時対応としての現地対策本部の設置等明確な指揮命令系統の確保やハード・ソフト両面からの作業員に対する支援強化、現場責任者の教育訓練の強化等を実施する。
・業務品質保証活動を通じて、設計管理、設計審査等における確認行為を強化する。
○社会に開かれた体制
・立地地元重視の観点から、本社機能を、新法人の主要業務に対応して、その拠点となる東海地区と敦賀地区に移す。主たる事務所は茨城県東海村に移転し、福井県敦賀市には敦賀本部を、東京には連絡事務所を設置する。
・広報、報道、情報公開、地元対応等を一元的に推進するため、国民との双方向の情報交流に配慮した「情報交流部(仮称)」を設置するとともに、事業所に広報担当部署を設置する。
・明確な情報公開指針に基づき、積極的な情報公開を展開する。
・地域フォーラムの開催、戸別訪問、イベント等への積極的な参加、「問い合わせ窓口」の制度化等により地域社会との交流を強化する。
・環境モニタリングデータをリアルタイムで通報または表示するシステムの構築により地域社会の安心感の醸成を図る。
・研究開発の成果が円滑に民間に技術移転されるよう、民間ニーズの的確な把握、コスト意識の定着に配慮しつつプロジェクトへの早期民間参加の仕組みの構築等を図る。
・任期付任用制度等を活用したプロジェクト研究体制の確立などにより、大学等他の研究開発機関との連携を強化する。
・新法人の施設・設備を広く大学等の研究者、技術者に開放し、施設・設備の共用化を図る。
・高速増殖炉等の分野で世界的拠点化を目指す等の積極的な国際協力を推進する。
・研究開発成果をデータベース化し民間に広く公開するなどにより、民間とも連携し、研究開発成果の効果的な社会還元を図る成果展開事業を推進する。
○新法人の当面の組織
・本社機能を見直し、スリム化するとともに、事業本部制を廃止し、本社機能の権限の多くを各事業所に移譲する。
・東海再処理工場、プルトニウム燃料工場等の大型施設については、関連施設の統合を図りセンター化し、センター長に責任と裁量権を一元化する。
・経営の企画調整、安全確保、情報公開等については全事業所横断的な組織を設置し、水平展開と調整機能を強化する。
・今後益々重要となる放射性廃棄物関連事業に関しては環境保全関連業務として強化する。
・1998年度定員としては、本社の管理・支援部門の人員を大幅削減し、また、整理縮小事業に係る人員減を図る一方で、安全管理業務、廃棄物関連業務、情報交流業務等の要員の増員を図る。

表2-1-3 科学技術庁の自己改革の取組
①職員の意識改革
・管理職研修及び課長補佐級研修において危機管理演習を導入するなど、緊急時対応を含めた研修プログラムを実施している。
②情報公開の徹底
・動燃改革検討委員会等の会議を公開している。
・原子力に対する情報提供の中核的拠点として原子力公開資料センター(文京区白山)を開設した。
③安全監視機能の強化
・現地との情報伝達機能の強化を図るため、テレビ通信システムを整備した。
・抜き打ち立入検査等を実施している。
・東海再処理施設運転管理専門官の常駐化、運転管理対策官の設置等運転管理体制を強化した。
・技術参与制度により、外部専門家を積極的に活用している。
・原子力安全研修を実施している。
④緊急時対応の強化
・当直制による24時間通報連絡体制を確立した。
・緊急時に一元的な情報集約、意思決定等を行う緊急時管理センターを設置し、運営体制を整備した。
・緊急時の危機管理を担当する安全管理企画官を新設した。
⑤原子力防災の強化
・「原子力防災検討会」において、防災体制の調査・検討を行った。
⑥地域との連携の強化
・立地地元である茨城県との人事交流を実施している。
⑦適切な法人監督
・原子力開発機関監査官を新設する。
・職員による動燃の各事業所の全施設・設備(約620施設)の現地調査を実施し、改善策を指示した。
・動燃が実施した安全性総点検結果の改善措置に関し、現場確認に基づく予算措置を実施した。

②科学技術庁における自己改革
 動燃の一連の事故及びその後の不適切な対応については、一義的には当事者たる動燃に責任があるが、動燃を指導監督する立場にある科学技術庁の責任も重大であるとの反省に立ち、科学技術庁は、1997年8月、「科学技術庁の自己改革について」を発表し、自己改革に着手するとともに、現在、表2-1-3の諸施策を中心として改革の実効を上げるべく具体的な改革活動を推進するとともに、一層の改善策について検討を進めている。

③動燃における自己改革
 動燃においても、動燃改革検討委員会報告書等を受け、また専門コンサルタントの調査結果等を踏まえ、社会との間の乖離をなくすための「意識改革の推進」、業務の質の向上を目指した「業務品質保証活動の推進」、事故の未然防止を目指した「安全性の総点検の実施」の3点を最優先課題として、自己改革の取り組みが推進されている。

表2-1-4 動燃の自己改革の取組
①意識改革の推進
・1997年10月に、職員としての心構えやとるべき行動を示すものとして、10ヶ条からなる「動燃行動憲章」を制定した。
・行動憲章に基づく個々の職員の行動計画及び管理職レポートの作成等全職員を対象とする憲章についての研修・理解活動(1998年3月末までに、約140回の意識改革研修を実施。)
・1998年5月、行動憲章を具体化する「行動規範」を制定した。
・課長級を中心とした外部研修を実施した。
②業務品質保証活動の推進
・業務に関する「要求品質10項目」を策定し、同項目に照らして業務改善の重要項目、改善方策等を検討し、業務品質保証活動を推進している。
・1998年3月末までに、「理事長診断会」を4回(本社、敦賀地区、東海、大洗)開催するとともに、各部門ごとに「部門長診断会」を開催し、現場において要求品質に照らした問題点、改善策の検討を行っている。
・品質保証の仕組みの有効性の確認等のため、定期的に品質監査を実施している。
・業務品質保証活動のため、推進スタッフの充実を図るとともに、品質保証に関する国際規格であるISO9000シリーズの認証取得を目指した活動に着手した。
③安全性の総点検の実施
・1997年9月より、動燃の全施設・設備を対象とし、管理・運営上の問題等の総抽出のため、全社一斉の総点検を実施した。
・問題の大小を問わず、改善すべきと考えられる点を全て洗い出した結果として、1997年10月末までに、法令上の問題となると考えられる項目も含め、約1,800件の検討項目を抽出しており、現在、それらの改善に取り組んでいる。
・早急に改善すべき事項でありかつ予算措置を必要とする事項については、1997年度予算として老朽化対策等88億円の安全対策費(東海事業所の再処理施設アスファルト固化処理施設火災爆発事故、ウラン廃棄物貯蔵ピット問題対応を含む。)を計上した。また、同様に、1998年度予算として137億円を予算措置した。
④情報公開指針の策定
・動燃に対する国民の理解と信頼の向上が図られるよう、1997年7月から、個人に関する情報や核不拡散、核物質防護に関する情報等の例外を除き、情報は原則公開とする「情報公開指針」の運用を開始した。
・現在、同指針を運用し、情報公開の推進に努めているところであるが、国における情報公開に関する法的措置の検討を踏まえ、今後、更に充実する予定である。

信頼される動燃を目指して
第1条
私たちは環境の保全と地域の人々の安全を第一に行動します。
第2条
私たちは社会との約束を守り、誤りは勇気を持って正します。
第3条
私たちは常に社会に耳を傾け、正確な情報を迅速に発信します。
第4条
私たちは地域社会との関係を大切にし、地域の一員として活動します。

社会に役立つ動燃を目指して
第5条
私たちは原子力エネルギーの開発が社会に役立つことを確信し、創意工夫と革新的技術を駆使して競争力のある技術開発に挑戦します。
第6条
私たちは広く成果を公開し、社会の評価を仰ぎます。
第7条
私たちは国民の負担で事業を行っていることを認識し、業務の効効率化に努めます。
第8条
私たちは原子力の平和利用のため、世界と交流し貢献します。

働きがいのある動燃を目指して
第9条
私たちは共に働く仲間をお互いに尊重し大切にします。
第10条
私たちはチャレンジ精神を発揮し、仕事を通じて自己実現を目指します。
図2-1-2 動燃行動憲章


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