第2章 国内外の原子力開発利用の状況
1.動燃改革について

(1)動燃改革の基本的方向

 科学技術庁は、動燃の体質及び組織・体制について、徹底的に第三者チェックを行うため、1997年4月、「動燃改革検討委員会」を発足させて検討を行い、動燃改革についての基本的考え方を取りまとめました。

①動燃改革検討委員会の開催
 科学技術庁は、一連の事故を引き起こした動燃の体質及び組織・体制について、徹底的に第三者的なチェックを行い、抜本的な改革を図る必要があるとして、1997年4月、動燃の組織・経営管理、情報伝達・広報、施設の管理、危機管理体制等の業務の現状全般について、聖域を設けず見直しを行い、動燃改革についての考え方の取りまとめを行うため、科学技術庁長官の下に外部の幅広い分野の学識経験者等からなる「動燃改革検討委員会」(座長:吉川弘之前東京大学総長)を発足させた。
 また、同委員会における検討に資するため、問題点の抽出等の作業を外部の専門コンサルタントを活用して実施した。

②動燃改革検討委員会報告書
動燃改革検討委員会は、各委員による個別現地調査を実施するとともに、動燃からのヒアリング、コンサルタントからの報告等を参考としつつ6回に及ぶ審議を重ね、1997年8月に「動燃改革の基本的方向」を取りまとめた。表2-1-1に同報告書の概要を示す。

表2-1-1 「動燃改革の基本的方向」の概要(1997年8月1日動燃改革検討委員会報告書)
①動燃改革の基本認識
 ○原子力政策と動燃
将来のエネルギー源確保のための核燃料サイクル実現に向けた開発は、我が国のエネルギー安全保障とともに、人類の未来のための国際貢献につながるものであり、動燃は、その開発の主役として、国民から負託を受けて設立された。
 ○動燃問題の構造
・動燃は、基本認識、方法などを異にする「先例のない研究開発」、「原子力であるが故の高い安全性」及び「競争力ある技術の供給」の同時実現という潜在的困難さを内包している。
・動燃は、自らを取り巻く様々な状況変化に的確に対応できず、この困難さを顕在化し、いわば「経営の不在」の状況にあった。

②動燃改革の基本的考え方
 ○経営不在の詳細
・資源配分における研究開発への偏重などにより、「安全確保と危機管理の不備」を招いた。
・「閉鎖性」から、自らの情報発信を怠り、外界の反応を得るという感受性を失った。
・「事業の肥大化」により、業務や組織の適正な管理が困難となった。
 ○改革のデザインの基本
・明確に設定された経営の裁量権、明確な事業目標の設定とその的確な評価、新法人の経営体の自己変革と経営の外部評価などを条件とする協力な経営が必要不可欠である。
・新法人の事業については、領域を限定する必要があり、見直しの明確な基準(研究開発の段階(レベル))を設定し、新法人が実施すべき事業を特定する。具体的には、実用化の可能性が不明な基礎研究、研究開発が十分に完成した実用化の技術開発は新法人の事業としては不適当である。
・安全確保と危機管理の体制、社会に開かれた体制、専門性の均衡と研究者の拡がり等の体制整備が必要である。

③改革の実現に向けて
 ○改革の具体化の方針
・動燃の現在の事業を抜本的に見直し、部分的に解消、または移管し、必要と考えられる部分で再出発させるとの方針の下に、動燃を新たな特殊法人(新法人)に改組する。
・新法人は、核燃料サイクルの確立に向け、長期的な観点から実用化を目指したプロジェクト指向型の研究開発を遂行する。
 ○経営の刷新
・新法人は、原子力委員会の定める長期計画等を受け、明確な事業目標を策定する。
・経営体にできる限りの裁量権を付与するとともに、第三者による経営の外部評価の機能を導入する。
・職員の裁量と業務分担の明確化、目標の共有化、人事交流や研修等を通じて意識改革を図る。
・業務遂行は、基本的に新法人の裁量で行うこととし、科学技術庁は、その業務結果の評価・監査を行うことを基本とする。
 ○新法人の事業
・新法人で実施すべき主たる事業は、高速増殖炉開発及び関連核燃料サイクル技術開発と高レベル放射性廃棄物処理処分研究開発とする。また、研究領域として先進的核燃料サイクル技術開発等を実施するとともに、軽水炉再処理研究開発については六ヶ所工場の安定的操業の段階まで実施し、その段階における東海再処理工場の役割として、高速増殖炉燃料再処理等の技術開発を行う施設としての活用を検討する。
・海外ウラン探鉱、ウラン濃縮研究開発、新型転換炉開発の3事業については整理縮小するほか、基礎研究は原研等へ移管又は廃止する。
・事業の実施に当たっては、コスト意識の定着、円滑な技術移転に配慮するとともに、整理縮小事業に関しては地元自治体等との協議と計画的かつ円滑な撤収に配慮する。
 ○安全確保の機能強化
・研究開発偏重を排し、運転管理部門と研究開発部門を分離する。
・運転管理に電力などの民間の能力や経験を活用する。
・施設・設備のメンテナンス等安全確保の基盤を整備する。
・一般防災への視点の強化を図る。
・万全な危機管理体制を確立する。
 ○社会に開かれた体制
・双方向の情報交流に配慮した広報・情報公開の強化を図る。
・他分野の技術成果の活用、研究開発成果の社会への還元、国際貢献・国際協力の積極的推進、任期付任用制度の導入等による広い人材の糾合、大学等との連携強化等により、開かれた研究開発体制を確立する。
・立地地元重視の観点から、本社の立地地域への移転、イベント参加等による地域社会に開かれた活動の推進、環境モニタリングデータの表示等による地域住民の信頼感の確立、科学技術庁による地域の原子力防災の強化及び関係地方自治体との人事交流等による地域との連携強化等、地域社会との共生に努める。


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