第1章 国民の信頼回復に向けて
1.原子力開発利用を巡る動向

(2)地球温暖化問題とCOP3

発電過程で温室効果ガスを発生しない原子力エネルギーは、地球温暖化防止に重要な役割を果たします。1997年12月に京都で行われたCOP3において合意された温室効果ガスの我が国の削減目標を達成するためにも、原子力の果たす役割の重要性を考えていくことが大切です。

 1980年代以降、地球温暖化に対する国際的取り組みが求められるようになり、気候変動枠組条約の下に国際的な検討が進められているが、1997年12月、京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」においては、温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書が採択された。この議定書は、地球時代の人類の生存基盤に係わる問題について国際的に一丸となって取り組みを決意したという意味で極めて画期的であるが、この中で先進国と市場経済移行国全体で人為的な温室効果ガスの排出量を1990年の水準から少なくとも5%削減することが合意された。


旧社会主義国等、市場経済への移行の過程にある国。京都議定書においては、ブルガリア、クロアチア、チェッコ、エストニア、ハンガリー、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、ロシア連邦、スロヴァキア、スロヴェニア、ウクライナを指す)

 国情の違いから原子力については京都議定書に明記されることはなかったものの、先進国である我が国は、今後いかに原子力エネルギーを全人類のために役立てていくべきかを示していく必要があり、COP3はその第一歩として極めて重い意味を有するものと考えられる。
 現行の長期計画においては、主要な温室効果ガスである二酸化炭素を発生しない原子力発電の重要性を指摘し、環境論的観点と全地球的観点から原子力の問題を考えることの重要性を示しているが、今後急速に増大するであろう世界人口や途上国におけるエネルギー消費の中で、温室効果ガスの削減に関しての原子力の果たす役割を抜きに、人類の持続可能な発展にとって望ましいエネルギー選択肢が何かを考えることは困難である。
 このような認識の下、原子力委員会はCOP3に先立ち、1997年11月18日に「地球温暖化問題と原子力の役割に関するシンポジウム」を開催し、地球環境問題における原子力の役割の重要性について、参加パネリストにより宣言文が採択された。
 京都議定書において我が国に課された6%の温室効果ガスの削減目標の達成には、二酸化炭素排出削減対策が重要であるが、1998年1月9日の地球温暖化対策推進本部の決定においては、省エネルギーの徹底や新エネルギーの導入等と並んで,2010年時点で原子力発電を4,800億kWh(7,050万kW、今後約20基の原子力発電所の増設に相当)とすることが前提とされている。このためには、エネルギーと環境に配慮した新しいライフスタイルの実践など、国民一人一人の理解と行動が重要であることはもとより、温室効果ガス削減目標の達成に果たす原子力の役割の重要性に鑑み、原子力発電の導入促進の必要性や安全性に関する国民の理解を求めていくことが一層重要である。

表1−1−5 「地球温暖化問題と原子力の役割に関するシンポジウム」参加パネリストによる宣言の結論
 原子力の利用は、温室効果ガスの排出抑制、エネルギーセキュリティーの強化、酸性雨や粒子状物質の減少を含む複数の長所を有していること、また、このエネルギー技術は、将来のエネルギーサービスの供給にとって重要な選択肢である。


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