インドによる核実験の実施について
平成10年5月12日
原子力委員会委員長談話

1.昨日、インドが地下核実験を実施した旨発表があったが、冷戦構造の崩壊後、国際社会が核不拡散、核実験禁止に努力する中、今回インドが核実験を行ったことは、このような国際的な動きや核兵器の究極的廃絶を希求する我が国国民の願いに逆行するものであり、極めて遺憾である。

2.当委員会は、原子力の平和利用を円滑に進めるためには、核不拡散体制の維持・強化への国際的な取組みを高く評価するとともにこれら取組みに積極的に貢献していくことが重要であると考えている。

3.この考え方に基づき、平成7年5月12日には、「核兵器の不拡散に関する条約」が無期限延長された際、本条約は、原子力平和利用と核不拡散を両立させる枢要な国際的枠組みであるとの基本認識に立って、本延長を歓迎する原子力委員長談話を発表している。また、平成9年4月22日には、「包括的核実験禁止条約」の批准に際し必要となった「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正を適当とする原子力委員会決定を行った際にも、本条約が核兵器のない世界の実現に向けた歴史的な一歩となるものと評価したところである。

4.今回のインドの地下核実験の実施は、国際社会が歓迎した「核兵器の不拡散に関する条約」及び「包括的核実験禁止条約」の趣旨に反するものであり、当委員会としては、インドがこのような実験を二度と行わず、早急に核開発を停止することを強く求めるものであり、政府が本件に関し適切な方策を講じることを期待する。