現在、我が国の原子力発電は全発電電力量の30%を越えるとともに、これを支える核燃料サイクル事業の面でも着実な進展を見せている。しかしながら、昨年12月の高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故の発生及びその後の情報提供における不適切な対応は、地元の方々はもとより、広く国民全体に原子力に対する不安感、不信感を与える結果となった。また、高速増殖炉は将来の核燃料リサイクル体系の中核と位置付けられていることから、今後の原子力政策に大きな影響を与える結果となった。
当委員会はこの状況を真摯に受け止め、本年3月、原子力に関する国民各界各層の多様な意見を今後の原子力政策に反映させるため、「原子力政策円卓会議」(以下「円卓会議」という。)を設置した。以来、第11回会合まで延べ127名の参加を得て活発な議論を行ってきたところ、先般、これまでの会議における議論を踏まえた提言をモデレーターから受けた。
当委員会は、これまでの円卓会議における議論及びモデレーターからの提言を真摯に受け止め、これらを今後の原子力政策に反映していくことが、我が国の原子力政策に関する国民の信頼を回復し、原子力開発利用を円滑に進めていく上で極めて重要であると認識する。そこで、今後、下記の考え方により原子力政策を展開していくこととし、さらに、これに基づく具体的措置についても策定次第、順次明らかにしていく。その際、円卓会議からの提言を受けて、先般、当委員会が決定した「原子力に関する情報公開及び政策決定過程への国民参加の促進について」に沿った措置を講じていく。なお、今回の考え方及びその具体的措置を実施していく中で、平成6年に当委員会が策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(以下「長期計画」という。)の上に、同計画の見直しをも視野に入れ、適切に反映していく。
(1)使用済燃料の管理について、長期的な対応をも視野に入れて、現実的かつ 合理的な解決策を策定する必要があり、総合エネルギー調査会で進められてい る検討も勘案しつつ、関係行政機関及び関係地方自治体の意見を踏まえ、考え 方を早急に明らかにする。
(2)プルトニウムの軽水炉利用について、総合エネルギー調査会で進められて いる検討も勘案しつつ、その目的・内容を早急に明らかにし、関係行政機関と も連携を取りつつ、国民的な合意形成に向け努力する。
(3)高速増殖炉について、「もんじゅ」のナトリウム事故の原因究明や安全性 総点検の着実な実施を図るとともに、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速 増殖炉開発の在り方について幅広い議論を行うため、当委員会に「高速増殖炉 懇談会(仮称)」を設置する。
(4)高レベル放射性廃棄物の取扱いを含めたバックエンド対策について、現在 開催されている「原子力バックエンド対策専門部会」、「高レベル放射性廃棄 物処分懇談会」の場の議論を通じ、高レベル放射性廃棄物の処分実施主体の設 立等に関する処分対策の具体策を出来る限り速やかに策定し、これを国民の前 に分かりやすい形で明らかにする。